CioRyは、AUTOSAR準拠のコンパクト&高速Basic Softwareを搭載したオールインワンフレームワークです。
車載ECUに必要なCAN/LIN通信スタック(MCAL含む)、OS、RTEと、これらのモジュールを簡単に設定可能なコンフィギュレータをワンパッケージにしています。プログラムサイズが小さく、マイコン処理負荷も低いためローエンドマイコンでも軽快に動作可能です。
ルネサスエレクトロニクス製RL78/F13,F14マイコンおよびRH850/F1Lマイコン、RH850/F1Kマイコンに対応しています。
AUTOSAR準拠オールインワンフレームワーク CioRyとは
AUTOSARとCioRy開発背景
近年、AUTOSARというキーワードは、自動車の電子制御ユニット(ECU)開発において無視できない存在となってきています。
ソフトウェアの部品化・再利用化、グローバルスタンダード、カーメーカからの要求など、車載組込みソフトウェアへのAUTOSAR対応の要求は年々高まってきています。
しかし、AUTOSAR仕様は膨大かつ複雑であり、また欧州発の仕様であることからその仕様書は全て英文であるということも、車載ECU開発者のAUTOSARへの取り組みに尻込みさせる理由となっています。そのため、開発者は既存のソフトウェアプラットフォームからAUTOSAR Basic Software(BSW)への移行が容易ではないことを感じています。
AUTOSARのすべての仕様を理解しないと使えないソフトウェアプラットフォームはナンセンスです。
AUTOSARの複雑な仕様に合わせて膨大な設定項目のあるAUTOSAR BSWのコンフィギュレータは、その設定項目の意味を理解するだけで開発者を悩ませ製品開発の時間を奪います。
従来のAUTOSAR BSWはプログラムサイズが大きく、ローエンドマイコンでは適用が困難であるという問題もあります。
AUTOSAR BSW導入につまずく開発者をサニー技研は数々見てきました。また導入のサポートもしてきたことから、AUTOSARの知見があまりなくても扱いやすいAUTOSAR BSWを開発することがサニー技研の目指すソフトウェアプラットフォームでした。
ローエンドマイコンでも軽快に動作することを目指して、コンパクトなプログラムサイズでマイコン処理負荷が低く高速なBSWを搭載したオールインワンフレームワーク。
それがCioRyです。
CioRyには以下の特長があります。
- MCALを搭載した軽量なプログラムサイズ
- 手軽なコンフィギュレーションツール
- モジュールパッケージ
CioRyとは
CioRyは、AUTOSAR仕様に準拠したコンパクト&高速Basic Softwareを搭載したオールインワンフレームワークです。Basic Software(BSW)とは、通信スタックやOSなどソフトウェアで共通に使用する機能をモジュール化したソフトウェアプラットフォームになります。
CioRyは、RTE(Runtime Environment), OS, CAN通信スタック, LIN通信スタックの各モジュールを備え、RTEのアプリケーション側インターフェースはAUTOSAR仕様に準拠しています。
通信スタックはMCAL(Microcontroller Abstraction Layer)を搭載しているため、半導体メーカからMCAL供給を受ける必要はありません。
CioRy構成図
付属のスマートコンフィギュレータは、パソコンのGUI画面からモジュール設定をすることでBSWのソースファイルをジェネレートして出力します。開発者は、BSWのソースファイルをアプリケーションに組み込むことにより、ソフトウェア開発効率の向上を図ることができます。
CioRyはローエンドマイコンでも動作可能のBSWとして、ルネサスエレクトロニクス製RL78/F13,F14に対応しています。また、CioRyの小型・高速なBSWをハイ/ミドルエンドマイコンにも活かして頂く為に、ルネサスエレクトロニクス製RH850/F1Lにも対応しています。
特長
MCALを搭載した軽量なプログラムサイズ
CioRy開発のきっかけは、ローエンドマイコンでも軽快に動作するAUTOSAR BSWを目指したことに始まります。
しかし、軽量でマイコン処理負荷の低いBSWは、膨大なAUTOSAR仕様の実装に対する挑戦でもありました。
サニー技研では、2007年からAUTOSARに加入するとともに、JasPar活動や名古屋大学大学院情報科学研究科付属組込みシステム研究センター(NCES)の主宰するコンソーシアム型共同研究に参画し、AUTOSARの仕様と実装に対する知見を高めて参りました。また、当社は車載通信ネットワークのスペシャリスト企業として、自動車メーカや自動車部品メーカ向けに、車載通信ソフトウェアや車載ECUアプリケーションなど、豊富な開発実績とノウハウを培っています。
CioRyの開発にあたっては複数の自動車部品メーカーと共同で、膨大なAUTOSAR仕様からユーザが必要とする機能と不要な機能を選別して絞り込みを行いました。例えばCAN通信ではユーザが必要とする機能を最適な範囲に実装することで、全体の仕様から約6割のボリュームへの絞り込みに成功し、ローエンドマイコンでも収まるプログラムサイズに落とし込みました。
通信スタックは、サニー技研独自のクラスタリング技術で更なるサイズダウンと高速化を実現しています。モジュール内部のアーキテクチャをクラスタリング化することで、モジュール間のオーバーヘッドを軽減し、ローエンドマイコンでも軽快に動作可能なようにマイコン負荷の軽減を図っています。
一般的なフルAUTOSAR BSWのROMサイズが数百KByte程度であるのに対して、CioRyはAUTOSAR準拠のBSWにもかかわらず、30KByte未満でRTE, OS, CAN通信スタック, LIN通信スタックのすべてのプログラムが収まるサイズを実現しています。
また、OS, RTE, CAN, LIN, DIAGを合わせてもCPU負荷率は20%未満で動作可能としました。
このコンパクトさは、ローエンドマイコンはもちろんのこと、ハイ/ミドルエンドマイコンでの適用にも威力を発揮します。
CioRyのROM/RAM使用量の参考値は下記の通りです。
CioRy ROM/RAM使用量参考値 (RL78/F14マイコン)
CAN通信スタック | LIN通信スタック | OS | RTE | DIAG | 合計 | |
ROMサイズ (Byte) |
13364 | 6368(Master) | 3983 | 821 | 3969 | 28505 |
RAMサイズ (Byte) |
632 | 323(Master) | 113 | 36 | 606 | 1710 |
※IAR製コンパイラでの値となります。
手軽なコンフィギュレーション
AUTOSARの膨大で複雑な仕様を全て熟知することは困難です。そして、AUTOSAR BSWの数百にもなるコンフィギュレーション設定の項目内容を理解するだけでも開発者には大変な負担を強いることになります。
サニー技研のCioRyは、膨大な仕様からユーザが必要になる最小限の設定項目を抽出し、ユーザがコンフィギュレータで手軽に設定できることを目指しました。
例えばCioRyのCAN通信スタックのコンフィギュレーション設定項目数は約40になり、一般的なフルAUTOSAR BSWと比較すると約1/10の項目数に簡素化しています。
スマートコンフィギュレータ画面イメージ
CioRyコンフィギュレータは、パソコンのGUI画面から設定した内容にしたがって、BSWのソースファイルを自動生成します。CioRyのスマートコンフィギュレータにより、ユーザは手軽に各種設定が可能です。
スマートコンフィギュレータ構成図
CioRy簡易コンフィグレータツール設定デモ動画
モジュール単体で使用が可能
AUTOSARへの移行を検討する際、将来的にはソフトウェアコンポーネント(SW-C)構成でのアーキテクチャへの移行を検討しているが、まだ時期尚早という場合もあるかと思います。
CioRy製品パッケージは、RTEは使わない、OSは不要、CANまたはLINモジュールだけで良いユーザに対しては通信ミドルパッケージとして通信スタックだけで使用が可能な構成となっています。
例えば、最初はCAN通信スタックのみでCioRyを導入しておき、将来的な拡張が必要になった際に追加でRTE, OSをパッケージ購入するような段階的な導入が可能です。
製品ラインナップ
製品パッケージ構成
CioRyは、ユーザのニーズに合わせて製品パッケージを選択できます。
AUTOSARパッケージは、RTE, OSと通信スタックを含めたオールインワンのフルパッケージです。
通信ミドルパッケージは、通信スタックのみのパッケージとなります。
その他、オプションでダイアグ通信モジュールもご用意しています。
CioRy 通信ミドルCANパッケージの製品情報はこちらをご覧ください。
CioRy 通信ミドルLINパッケージの製品情報はこちらをご覧ください。
CioRy 通信ミドルCXPIスレーブパッケージの製品情報はこちらをご覧ください。
CioRy 通信ミドルCAN FDパッケージの製品情報はこちらをご覧ください。
CioRy製品パッケージ
製品パッケージ区分 | 製品パッケージ種別 | 同梱モジュール |
AUTOSAR (RTE, OSを含むオールインワンパッケージ) |
CANパッケージ | RTE, OS, CAN |
LINパッケージ | RTE, OS, LIN(Master/Slave) | |
通信ミドル (RTE, OSを除いた通信スタックパッケージ) |
CANパッケージ | CAN |
LINパッケージ | LIN(Master/Slave) | |
CXPIスレーブパッケージ | CXPI(Slave) | |
CAN FDパッケージ | CAN FD | |
通信ライブラリ | CioRy CANクイックライブラリ | CAN(CAN FD) |
ダイアグ(オプション) | DIAGパッケージ | DIAG(トランスポート層) |
※全てのパッケージにスマートコンフィグギュレータが同梱します。
オプション対応
種別 | 概要 |
サポート契約 | CioRyに関する問い合わせ対応(QAサポート)、最新Ver.提供 |
カスタムオプション | CioRyカスタマイズ対応(特別仕様対応、モジュール追加、C.D.D開発等) |
ユーザーの開発フェーズに合わせたライセンスをご提供
CioRyは、ユーザーの開発フェーズに合わせて様々なライセンス形態をご提供しています。
先行評価・開発フェーズ向けのユーザーには、開発ライセンスを選択して頂く事で初期費用を抑えてCioRyパッケージを導入頂けます。
その後、量産を見据えた開発フェーズへ入った際には、量産ライセンスにアップグレードが可能です。
量産ライセンスは使用プロジェクト本数の制限が無い、Blanket Licenseもご用意しています。
サポート対応
開発ライセンス、量産ライセンスともに、導入後のサポート対応が付帯しています。(ライセンス形態によりサポート期間・対応時間制限は変わります)
ユーザーへのサポート対応は、CioRyの開発担当者が直接対応致しますので導入後の心配はありません。
カスタム受託開発
CioRyパッケージをベースソフトにして、カーメーカ―通信仕様への対応やユーザーご要求仕様にカスタマイズ対応をお引き受けすることも可能です。
車載通信ソフト開発の豊富な経験と実績があるサニー技研へお気軽にご相談ください。
製品仕様
対応仕様一覧
モジュール | 対応仕様 |
BSW | AUTOSAR Release.4.0.3準拠 ICC1レベル |
RTE | NCES 次世代車載システム向けRTE外部仕様書準拠 |
OS | BCC1(ECC1対応可) |
CAN通信スタック | NMはカスタムでOSEK/VDX仕様、AUTOSAR NM仕様への対応可能 |
LIN通信スタック | LIN Rev.2.1仕様準拠 |
CXPI通信スタック | JASO D015仕様準拠 |
CAN FD通信スタック | NMはカスタムでOSEK/VDX仕様、AUTOSAR NM仕様への対応可能 |
注意事項
CioRyは、AUTOSAR仕様に基づいていますが、AUTOSARはAUTOSAR仕様に基づいたソフトウェアを商用目的で利用する者に対して、AUTOSARパートナーになることを求めていますのでご留意ください。詳しくは、AUTOSARのFAQをご覧ください。
参照 URL: https://www.autosar.org/faq/
お問い合わせ
CioRyへのお問い合せは、こちらからお願いいたします。
サニー技研のAUTOSARへの取り組み
サニー技研の車載AUTOSAR開発の取り組み、開発実績は以下のリンクからご覧ください。