RH850/F1K評価ボード《S810-CLG5-F1K》
車載ECU開発の効率化を実現する評価ボード
現代の車載ECU開発が直面する課題
自動車の電動化・自動運転化が急速に進む中、車載ECUの開発はかつてないほど複雑化しています。特にRH850/F1Kマイコン、RH850/F1KM-S1マイコンを使用した開発において、開発者は以下のような深刻な課題に直面しています。
開発現場で頻発する問題
- 汎用評価ボードでは実際のECU設計と異なるピンアサインのため、実環境での動作検証が困難
- CAN FDとLINの混在ネットワークでの評価環境構築に時間とコストがかかる
- マイコンの特定ピンへのアクセスが困難で、詳細なデバッグや波形観測ができない
- 複数の通信チャンネルを同時に評価する際、配線が複雑になり作業効率が低下
- 電源系統の柔軟な変更ができず、実車環境を模擬した評価が困難
RH850/F1K評価ボードによる課題解決
RH850/F1K評価ボード《S810-CLG5-F1K》は、車載ECU開発者の声を反映し、これらの課題を根本的に解決します。マイコン全100ピンをスルーホールで引き出し、通信インターフェースの割り当てをジャンパで柔軟に変更可能。実車環境により近い条件での評価を可能にし、開発期間の短縮と品質向上を実現します。
RH850/F1K評価ボードの特長
車載ECU開発に特化した最適設計 - 実環境を忠実に再現

開発者の声を反映した実用的な設計
車載ECU開発者へのヒアリングを基に、汎用評価ボードの課題を解決。CAN FD 3ch、LIN 2chの豊富な通信インターフェースを搭載し、現代の車載ネットワーク評価に対応します。
柔軟な通信チャンネル割り当て
通信インターフェースへのマイコン割付チャンネルをジャンパで切り替え可能。開発中のECU設計に合わせて、評価ボードの構成を自由に変更できます。これにより、実機により近い環境での評価が可能になります。
マイコン全100ピン対応スルーホール - 完全なアクセシビリティを実現
詳細なデバッグと波形観測を可能に
RH850/F1Kマイコンの全100ピンを2.54mmピッチのスルーホールで引き出し。オシロスコープやロジックアナライザを使用した詳細な波形観測が可能です。
拡張性の高い設計
- 標準的な2.54mmピッチにより、市販のピンヘッダやジャンパワイヤが使用可能
- ピンヘッダ(HIF3H-26PB-2.54DSA)を実装することで、拡張基板の接続も容易
- お客様独自の回路を追加して、実機に近い評価環境を構築可能
開発効率の大幅向上
従来の評価ボードでは困難だった特定ピンへのアクセスが容易になり、デバッグ時間を大幅に短縮。問題の早期発見と解決により、開発期間全体の短縮に貢献します。
次世代車載通信に完全対応 - CAN FD/LIN混在環境を実現
豊富な通信インターフェース
-
CAN FD(CAN共通): 3チャンネル搭載
- 高速通信に対応するNXP TJA1049Tトランシーバ採用
- 従来のCAN通信とCAN FD通信の両方に対応
- 最大5Mbpsの高速データ転送に対応
-
LIN: 2チャンネル搭載
- NXP TJA1020Tトランシーバ採用
- ボディ系ECUとの通信評価に最適
- マスター/スレーブ両モードでの動作が可能
実車環境を模擬した評価が可能
現代の車両では、CAN、CAN FD、LINが混在した複雑なネットワークが構築されています。本評価ボードは、これらすべての通信方式に対応し、実車と同等の通信環境での評価を可能にします。
柔軟な電源系統設計 - あらゆる評価シナリオに対応

多様な電源供給方式に対応
付属のACアダプタによる12V供給のほか、実車のバッテリー電圧を模擬したDC電源での動作も可能。電源ICの使用/非使用もジャンパで切り替え可能なため、お客様の実際の電源設計に合わせた評価ができます。
電源電圧モニタリング機能
5V端子、12V端子にテストピンを実装。電源電圧の安定性や電圧降下の確認が容易に行え、電源起因の不具合を早期に発見できます。
豊富なI/Oインターフェース
開発・デバッグを支援する充実の周辺機能
表示デバイス
- LCD(16文字×2行): デバッグ情報やステータス表示に活用
- LED×4: 動作状態の視覚的な確認が可能
入力デバイス
- ディップスイッチ(4ch): 動作モードの切り替えに使用
- プッシュスイッチ×4: イベントトリガーや機能切り替えに対応
- 可変抵抗×4: アナログ入力のシミュレーションが可能
デバッグインターフェース
- UART(USB/RS232C切り替え可能): PCとの通信やログ出力に使用
- E1エミュレータコネクタ: ルネサス純正デバッガとの接続に対応
活用例
これらのI/Oを組み合わせることで、実際のECU動作を模擬した評価が可能。例えば、可変抵抗でセンサー入力を模擬し、その結果をLCDに表示しながら、CAN通信で制御指令を送信するといった複合的な評価が実現できます。
主要機能詳細
対応マイコンと拡張性
RH850/F1Kファミリーに幅広く対応
| 対応マイコン | ピン数 | 主な用途 | 備考 |
|---|---|---|---|
| RH850/F1K | 100Pin | ボディ系ECU、小規模制御システム | 標準対応 |
| RH850/F1KM-S1 | 100Pin | 機能安全対応ECU、ASIL-B対応システム | 標準対応 |
※本製品はソケットタイプでの提供となります。マイコンデバイスは別途ご用意ください。
通信インターフェース詳細仕様
CAN/CAN FDインターフェース
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| チャンネル数 | 3ch |
| トランシーバ | ROHM BD41044FJ-C |
| 対応プロトコル | CAN 2.0A/B、CAN FD |
| 最大通信速度 | CAN: 1Mbps、CAN FD: 5Mbps |
| コネクタ | 3ピン |
| 終端抵抗 | ジャンパで有効/無効切り替え可能 |
LINインターフェース
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| チャンネル数 | 2ch |
| トランシーバ | NXP TJA1020T |
| 対応プロトコル | LIN 2.x |
| 最大通信速度 | 20kbps |
| 動作モード | マスター/スレーブ切り替え可能 |
活用シーン
開発フェーズごとの最適な活用方法
1. プロトタイプ開発フェーズ
基本動作確認
マイコンの初期設定、ペリフェラル動作確認、基本的な通信機能の実装とテストを効率的に実施。全ピンアクセス可能な設計により、詳細な動作確認が可能です。
通信プロトコル実装
CAN FD、LINの各種通信プロトコルスタックの実装と検証。複数チャンネルを使用した同時通信テストも容易に実施できます。
2. システム統合フェーズ
ECU間通信評価
複数のECUとの協調動作確認、ゲートウェイ機能の実装と評価、ネットワーク負荷試験などを実車に近い環境で実施可能です。
実車環境シミュレーション
可変抵抗によるセンサー入力模擬、スイッチによるユーザー操作再現など、実車での使用状況を忠実に再現した評価が可能です。
3. 検証・デバッグフェーズ
詳細デバッグ
MicroPecker RAMモニタとの連携により、リアルタイムでの変数監視とパラメータ調整が可能。タイミングクリティカルな問題も確実に捉えられます。
長期安定性評価
温度変化や電源変動を模擬した環境での連続動作試験、メモリリークや通信エラーの検出など、製品化前の最終確認に最適です。
製品仕様
ハードウェア仕様一覧
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 製品型名 | S810-CLG5-F1K |
| 対応マイコン | ルネサスエレクトロニクス RH850/F1K(100Pin)、RH850/F1KM-S1(100Pin) [*1] |
| 水晶発振器 | 20MHz(高精度水晶振動子搭載) |
| CAN/CAN FDトランシーバ | ROHM BD41044FJ-C |
| LINトランシーバ | NXP TJA1020T |
| CAN/CAN FDインターフェース | 3ch(3ピンコネクタ) |
| LINインターフェース | 2ch(3ピンコネクタ) |
| デバッグインターフェース | UART×1ch (USB/RS232C切り替え可能) E1エミュレータコネクタ×1ch(14ピン) |
| 表示デバイス | LCD(16文字×2行、バックライト付き) LED×4(赤、緑、黄、青) |
| 入力デバイス | ディップスイッチ(4ch)×1 プッシュスイッチ×4(タクトスイッチ) 可変抵抗×4(10kΩ) |
| 電源入力 | DC12V(ACアダプタ付属) 電源端子台での外部電源入力も可能 |
| 消費電流 | 最大500mA(12V入力時) |
| 動作温度範囲 | 0~40℃(結露なきこと) |
| 外形寸法 | (W)160×(D)120mm ※突起部を除く |
| 重量 | 約250g(マイコン未実装時) |
[*1] ソケットタイプでのご提供となります。RH850/F1K(100Pin)またはRH850/F1KM-S1(100Pin)のデバイスにつきましては、お客様にてご用意いただく必要がございます。
付属品
- ACアダプタ(入力: AC100-240V、出力: DC12V/2A)
- ハードウェアマニュアル、回路図(PDF形式、ダウンロード提供)
- 保証書兼解説書
※以下は付属しておりません
- マイコンデバイス
- CANケーブル、LINケーブル
- サンプルソフトウェア
- ピンヘッダ
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製品詳細を見るよくあるご質問
Q: マイコンは付属していますか?
A: 本製品はソケットタイプでの提供となります。RH850/F1KまたはRH850/F1KM-S1のマイコンデバイスは、お客様にて別途ご用意いただく必要があります。
Q: サンプルソフトウェアは提供されますか?
A: 現在、サンプルソフトウェアは付属しておりません。ただし、基本的な動作確認用のコードサンプルについては、技術サポートにてご相談を承っております。
Q: 他のRH850シリーズのマイコンには対応していますか?
A: 本製品は100ピンパッケージのRH850/F1KおよびRH850/F1KM-S1専用に設計されています。176ピンパッケージのRH850/F1Kには、S810-TPF-FD121をご検討ください。
Q: 通信チャンネルの割り当て変更に制限はありますか?
A: マイコンのピン配置により、一部の組み合わせではジャンパでの切り替えができない場合があります。具体的な構成については、技術サポートまでお問い合わせください。
Q: MicroPecker RAMモニタとの接続方法を教えてください。
A: E1エミュレータコネクタ経由で接続します。詳細な接続方法と設定手順は、ハードウェアマニュアルに記載されています。