RL78/F24ボード《S810-CXG5》

RL78/F24ボード《S810-CXG5》

RL78/F24ボードは、ルネサスエレクトロニクス製RL78/F24マイコンの評価に最適化した車載ECU開発ボードです。次世代車載通信のCAN FDとCXPIのインターフェースを搭載。CXPIマスター/スレーブの切替機能により、1枚のボードで多様な評価が可能です。ROHM製CXPIトランシーバ搭載モデル《S810-CXG5-XR》とInfineon製CXPIトランシーバ搭載モデル《S810-CXG-XI》に2タイプがあります。

次世代車載通信開発を加速する評価ボード

車載ECU開発における新たな課題

自動車の電動化と自動運転技術の進展により、車載ネットワークは急速に高度化しています。特に、CXPIやCAN FDといった次世代通信プロトコルの導入が進む中、開発者は以下のような課題に直面しています。

開発現場が抱える深刻な問題

  • CXPI通信の評価環境構築が困難で、マスター/スレーブ両方の検証に複数のボードが必要
  • セキュリティ機能(HSM)を活用した実装評価が汎用ボードでは困難
  • CAN FDとCXPIの混在ネットワーク環境の構築に時間とコストがかかる
  • リプログラミングやOTA更新機能の評価環境が整備されていない
  • 実車環境を模擬したマスター/スレーブ切替評価が煩雑

RL78/F24評価ボードによる課題解決

RL78/F24評価ボード《S810-CXG5》は、これらの課題を根本的に解決します。CXPIマスター/スレーブをスイッチ一つで切替可能にし、セキュリティ機能評価に必要なインターフェースを完備。次世代車載ECU開発の効率化と品質向上を実現します。

RL78/F24評価ボードの特長

次世代車載通信CXPI完全対応 - マスター/スレーブを1枚で実現

CXPI機能ブロック図

手軽なCXPI評価環境

マスター/スレーブ切替機能を搭載。スイッチ一つで動作モードを切り替えられるため、1枚のボードでCXPIネットワーク全体の評価が可能です。

実車環境に即した評価機能

CXPI信号取得用テストピン(CXPI、VBAT、GND)を配置。オシロスコープによる波形観測が容易で、通信品質の詳細な分析が可能です。

セキュリティ機能開発に最適化 - HSM活用を完全サポート

機能ブロック図

セキュアな車載ECU開発を実現

RL78/F24マイコン内蔵のHSM(Hardware Security Module)を活用したセキュリティ機能開発に対応。
暗号化通信やセキュアブートの実装評価が可能です。

リプログラミング・OTA対応

  • 8Mbit大容量EEPROM搭載でファームウェア更新機能の評価に対応
  • USBシリアル通信によるPCとの高速データ転送
  • 実車でのOTAアップデート機能の事前検証が可能

CAN FD通信機能 - 高速データ転送を実現

CAN FD機能

最新のCAN FD通信に完全対応

NXP製TJA1441DTトランシーバ採用により、従来のCAN通信とCAN FD通信の両方に対応。最大5Mbpsの高速データ転送を実現します。

評価効率を高める機能

  • CAN Hi/Lo信号取得用テストピン配置
  • 終端抵抗ON/OFF切替スイッチ搭載
  • ノード構成の変更が容易

CXPI通信機能 - 次世代車載通信プロトコル

CXPI機能

CXPI通信評価環境

次世代車載通信プロトコルCXPI(Clock Extension Peripheral Interface)対応トランシーバ搭載。2種類のCXPIトランシーバから選べます。

  • ROHM製CXPIトランシーバ搭載モデル《S810-CXG5-XR》
  • Infineon製CXPIトランシーバ搭載モデル《S810-CXG5-XI》

1枚で完結する評価機能

  • CXPIマスター/スレーブ切替スイッチ搭載
  • CXPI信号取得用テストピン(CXPI、VBAT、GND)配置
  • 単一ボードでネットワーク全体の動作検証が可能

CXPIの技術的優位性

CXPIは、従来のLIN通信の課題を解決する次世代プロトコルです。

  • 高速ウェイクアップ機能: 車両の省電力化に貢献
  • ノード数拡張: 最大20ノードまで接続可能(LINは16ノード)
  • 通信速度向上: 20kbpsの高速通信(LINと同等以上)
  • EMC性能向上: PWM符号化+同期通信のため、LINよりもノイズ耐性が高く、安定した通信を実現

マスター/スレーブ切替による効率的な評価

動作モード主な用途評価内容
CXPIマスターゲートウェイECU、ボディコントロールモジュールネットワーク制御、タイミング管理、スレーブノード管理
CXPIスレーブセンサーノード、アクチュエータノードコマンド応答、データ送信、省電力動作

スイッチ一つで役割を切り替えられるため、以下のような評価が1枚のボードで実現可能です。(ソフトウェアはユーザーで用意が必要です)

  • マスターノードのネットワーク管理機能評価
  • スレーブノードの応答性能測定
  • ウェイクアップ/スリープ遷移の動作確認
  • 異常系テスト(通信エラー、タイムアウト処理)

充実した拡張機能 - あらゆる評価シナリオに対応

電源系統図

柔軟な電源供給方式

  • ACアダプタ、安定化電源、USB給電の3方式に対応
  • 電源トグルスイッチによる12V供給のON/OFF制御
  • 5V/GND確認用テストピンで電源品質を常時監視可能

豊富なデバッグインターフェース

  • マイコンピン引き出し用スルーホール
  • E2エミュレータコネクタ標準装備
  • USBシリアル通信でPCとの連携強化

豊富なI/Oインターフェース

開発・デバッグを支援する充実の周辺機能

表示デバイス

  • 7セグメントLED×2: 数値データの表示
  • LED×5: 赤×1、緑×4で動作状態を可視化

入力デバイス

  • ディップスイッチ(4bit): 動作モード設定
  • プッシュスイッチ×4: 機能切替・イベントトリガー
  • リセットスイッチ×1: システムリセット

通信インターフェース

  • CAN FD×1ch: 高速車載通信
  • CXPI×1ch: 次世代車載通信
  • UART×1ch: USB経由でPCと接続

メモリ

  • EEPROM 8Mbit: Macronix製MX25V8035FM1I搭載
  • リプログラミング・OTA評価に最適

活用シーン

開発フェーズごとの最適な活用方法

1. プロトタイプ開発フェーズ

CXPI通信の基礎評価

CXPIマスター/スレーブの基本動作確認から、ネットワーク構築まで1枚のボードで完結。付属のデモプログラムで即座に評価を開始できます。

セキュリティ機能の実装

HSMを活用した暗号化通信やセキュアブートの実装評価。車載ECUに求められるセキュリティ要件への対応を効率的に進められます。

2. システム統合フェーズ

混在ネットワークの評価

CAN FDとCXPIが混在する実車環境を模擬。ゲートウェイ機能の実装や、プロトコル変換の評価が可能です。

OTA機能の検証

8Mbit EEPROMを活用したファームウェア更新機能の評価。実車でのOTAアップデートを想定した事前検証が実施できます。

3. 検証・デバッグフェーズ

MicroPecker連携デバッグ

MicroPecker RAMモニタとの連携により、プログラム実行中のRAM値をリアルタイム監視。問題の早期発見と解決を実現します。

通信品質の詳細分析

テストピンを活用した波形観測により、通信品質を詳細に分析。ノイズ耐性や信号品質の最適化が可能です。

CXPIスターターキット

すぐに始められるCXPI通信評価

CXPIデモ構成

CXPIデモプログラム付属

S810-CXG5は、ダウンロードコンテンツとして、CXPI通信評価用デモプログラムを提供。CXPIマスター/スレーブノードとしての基本動作がすぐに確認できます。

S810-CXG5を2式と、CXPI通信マスターノード/スレーブノード用のデモプログラムをセットにした評価キットのCXPIスターターキットも用意。
CXPIの学習環境として、すぐにCXPI通信を体感できます。

特長

  1. すぐに動作確認が可能
  • S810-CXG5ボードにデモプログラムを書き込むだけでCXPI通信を確認可能
  • 周期送信・イベント送信・エラー判定などの特長を体感可能
  • 提供デモソフトはバイナリ形式(ソースコード非公開)
  1. CXPI通信に最適化した RL78/F24 マイコン搭載ボード
  • CXPIトランシーバ搭載
  • マスター/スレーブ動作をジャンパ切替で変更可能
  • テストピンやI/O機能を備えた評価向け設計
  1. CXPI通信評価用デモプログラム付属
  • マスターノード/スレーブノード両方のデモプログラムを提供
  • 2式組み合わせることでネットワーク構成を再現可能
  • プッシュスイッチ、ディップスイッチ、7セグLEDによる動作確認やエラーメッセージ表示が可能

CXPIデモプログラム仕様

フレーム送信/受信

  • ID:0x0A, 0x4A(周期10ms)
  • ID:0x40, 0x20(イベント送信, DLC 12)
  • ID:0x1F(SLEEPコマンド) など

表示機能

  • 7セグLED:フレーム受信回数、エラー情報表示
  • DIP SW:エラークリア、初期状態Sleep/Wakeup切替
  • PUSH SW:Wakeup/Sleep要求切替、イベント送信

製品仕様

製品パッケージ

ROHM製CXPIトランシーバ搭載モデル

項目内容
製品名RL78/F24ボード
製品型名S810-CXG5-XR
CXPIトランシーバROHM製 BD41003FJ-C

Infineon製CXPIトランシーバ搭載モデル

項目内容
製品名RL78/F24ボード
製品型名S810-CXG5-XI
CXPIトランシーバInfineon製 S6BT112A02SSBB002

その他のハードウェア仕様一覧

項目仕様
搭載マイコンルネサスエレクトロニクス RL78/F24(R7F124FPJ3AFB-C)100pin
CAN/CAN FDトランシーバNXP製 TJA1441DT/0Z
EEPROMMacronix製 MX25V8035FM1I(8Mbit)
CAN/CAN FDインターフェース1ch(3ピンコネクタ、終端抵抗切替スイッチ付)
CXPIインターフェース1ch(3ピンコネクタ、マスター/スレーブ切替スイッチ付)
UARTインターフェース1ch(USB micro-B)
デバッグインターフェースE2エミュレータコネクタ×1ch(14ピン)
表示デバイス7セグメントLED×2、LED×5(赤×1、緑×4)
入力デバイスディップスイッチ(4bit)×1、プッシュスイッチ×4、リセットスイッチ×1
電源入力DC12V±0.6V(ACアダプタ付属)※USB給電も可能(CXPI回路は動作不可)
動作温度範囲0~40℃(結露なきこと)
外形寸法(W)95×(D)85mm ※突起部を除く

付属品

  • ACアダプタ(入力: AC100-240V、出力: DC12V)
  • USBケーブル(microB)
  • CXPIケーブル(3pin 0.17m)
  • 解説書兼保証書

ダウンロードコンテンツ

  • ハードウェアマニュアル(PDF形式)
  • 回路図(PDF形式)
  • CXPI通信評価用デモプログラム
  • CXPI通信評価用デモプログラム簡易ユーザーズマニュアル

関連製品・オプション

CioRy通信ミドルウェア対応

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CioRy製品詳細

よくあるご質問

Q: CXPIマスターとスレーブを同時に評価できますか?

A: 本ボード2枚を使用することで、マスター/スレーブの同時評価が可能です。1枚のボードでは、スイッチ切替により、どちらか一方のモードで動作します。

Q: USB給電のみでCXPI通信は可能ですか?

A: USB給電ではCXPI回路は動作しません。CXPI通信評価には、付属のACアダプタまたは外部電源(DC12V)をご使用ください。

Q: HSM機能の評価にはどのような準備が必要ですか?

A: RL78/F24マイコンのHSM機能を使用するには、ルネサスエレクトロニクス社のセキュリティドライバが必要です。詳細はルネサスエレクトロニクス社までお問い合わせください。

Q: デモプログラムのカスタマイズは可能ですか?

A: 有償となりますが、お客様の評価内容に合わせてカスタマイズして提供が可能です。

Q: 他のRL78シリーズには対応していますか?

A: 本製品はRL78/F24(100pin)専用に設計されています。他のRL78シリーズについては、別製品のご検討をお願いします。

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