RH850/U2A評価ボード《S810-GPX-U2A》
次世代車載ECU開発のための評価ボード
車載システムの進化が求める新たな開発環境
自動運転レベル3の実用化が進む中、車載ECUには前例のない高度な機能が要求されています。特にRH850/U2Aマイコンを使用した次世代ECU開発において、開発者は以下のような技術的課題に直面しています。
次世代車載開発で直面する課題
- 仮想化技術(Hypervisor)の実装と複数OS統合環境での評価が困難
- 車載Ethernet(100BASE-T1)と従来の通信プロトコルが混在する複雑なネットワーク環境の構築
- EVITA Fullに準拠したセキュリティ機能(HSM)の実装と評価環境の不足
- パーシャルネットワーキングなど省電力機能の実環境評価が困難
- 292ピンという多ピンパッケージの全機能を活用した評価環境の構築コスト
RH850/U2A評価ボードによる革新的解決
RH850/U2A評価ボード《S810-GPX-U2A》は、次世代車載ECU開発者のニーズに応えるソリューションです。マイコン全292ピンをスルーホールで引き出し、車載Ethernet、CAN FD、LINの全通信インターフェースを搭載。仮想化支援機能やセキュリティ機能の評価環境も完備し、開発期間の大幅短縮と品質向上を実現します。
RH850/U2A評価ボードの特長
次世代車載技術の評価環境
仮想化技術とセキュリティの統合環境
RH850/U2Aの最大の特長である仮想化支援機能(HAV)を活用したHypervisor実装評価が可能。複数のOSを同時実行し、リソース共有の最適化を実現します。EVITA Fullに対応したHSM機能により、次世代のセキュアな車載システム開発をサポートします。
全通信プロトコルに対応
車載Ethernet(100BASE-T1対応)、CAN FD 4ch、LIN 2chを搭載。さらにCXPIへの拡張も可能。現在から未来まで、あらゆる車載通信プロトコルの評価に対応します。
マイコン全292ピン対応スルーホール

完全なハードウェアアクセスを実現
RH850/U2A8マイコンの全292ピンを2.54mmピッチのスルーホールで引き出し。高速信号の波形観測から、独自拡張回路の追加まで、あらゆる評価ニーズに対応します。
研究開発から量産評価まで対応
大学や研究機関での先端技術研究から、量産前の最終評価まで、幅広い用途で活用可能。ピンヘッダを実装することで、カスタム拡張ボードとの接続も容易です。
車載Ethernetと次世代通信の完全統合

車載Ethernet対応
- 100BASE-TX: 標準Ethernetによる開発環境での評価
- 100BASE-T1対応コネクタ: 車載Ethernet PHYチップを接続可能
- ルネサスエレクトロニクス社製100BASE-T1基板互換回路搭載
- 単一ツイストペア線による軽量化を実現
- 車載ネットワークのバックボーンとして活用
次世代CAN FD機能
- 4チャンネル搭載: 複雑なネットワークトポロジーに対応
- パーシャルネットワーキング対応回路
- 省電力モードでの選択的Wake-up機能
- バッテリー駆動時間の大幅延長を実現
- ROHM BD41044FJ-Cトランシーバ採用
マルチプロトコル対応
- LIN 2チャンネル: ボディ系ECUとの通信
- CXPI拡張可能: 次世代ボディ系通信への対応
- より高速なボディ系通信を実現
- ノイズ耐性の向上
仮想化支援機能の実装評価環境 - 複数OSの統合を実現
Hypervisorアーキテクチャイメージ図
(SafeG-Autoを参考に当社作成)
TOPPERS SafeG-Auto対応
TOPPERSプロジェクトの車載制御システム統合(ECU統合)向けハイパーバイザー「SafeG-Auto」に対応。RH850/U2Aが搭載するHardware Assisted Virtualization (HAV)を用いて、低オーバヘッドで複数の仮想マシンを実現。各仮想マシンは空間・時間的にパーティショニングされた環境で実行されます。
SafeG-Autoの特長
- HAVによる低実行オーバヘッドの仮想化
- MPUによる空間パーティショニング
- TDMAスケジューリングによる時間パーティショニング
- 統合前のコードから大きな変更なしに動作可能
- TOPPERS/ATK2カーネルが付属
セキュリティ機能の包括的評価 - EVITA Full準拠の実装
Hardware Security Module (HSM)機能
RH850/U2Aに搭載されたHSM機能を活用し、車載セキュリティ規格EVITA Fullに準拠したセキュアな実装が可能。暗号化処理の高速化と、鍵管理の安全性を両立します。
評価可能なセキュリティ機能
- セキュアブート: 起動時の改ざん検出
- SecOC: CAN通信の認証とメッセージ保護
- 暗号化通信: AES、RSA等の暗号処理性能評価
- 鍵管理: セキュアな鍵の生成・保管・更新
当社のHSMセキュリティサポート
当社の実績による、HSMセキュリティサポート対応可能です。
ぜひ、ご相談ください。
- HSM機能を使用する際の課題検討
- 鍵登録/読み出し時間の計測
- HSMを使った暗号化 / 復号の処理時間計測
- セキュアブートにかかる時間の計測
- SecOC MAC演算の処理負荷分析
豊富なI/Oインターフェース
開発効率を最大化する充実の周辺機能
入力デバイス
- ディップスイッチ(8ch): 動作モードの詳細設定
- プッシュスイッチ×4: ユーザーイベントのトリガー
- リセットスイッチ: システムリセット機能
表示デバイス
- LED×8: 多様な状態表示が可能
- 仮想マシンごとの動作状態表示
- 通信チャンネルのアクティビティ表示
デバッグインターフェース
- UART(USB Micro-B): PCとの高速通信
- E2エミュレータコネクタ: ルネサス純正デバッガ対応
- 複数OSのデバッグ出力を同時監視可能
電源システム
- 12V外部電源入力: 実車環境を模擬
- マルチ電源レール: 5V/3.3V/1.09V生成
- 各電源系統の独立したモニタリングが可能
主要機能詳細
対応マイコンと仕様
RH850/U2Aマイコン搭載
| 項目 | 仕様 | 特長 |
|---|---|---|
| 搭載マイコン | RH850/U2A8 (R7F702301BFABG-C) | 400MHz動作、8MBフラッシュ搭載 |
| パッケージ | 292pin BGA | 全ピンスルーホール引き出し |
| 仮想化支援 | Hardware Assisted Virtualization (HAV) | 最大4つの仮想マシン同時実行 |
| セキュリティ | HSM (EVITA Full準拠) | 暗号処理アクセラレータ搭載 |
通信インターフェース詳細仕様
車載Ethernetインターフェース
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 標準Ethernet | 100BASE-TX×1ch (RJ-45コネクタ) |
| 車載Ethernet | 100BASE-T1対応コネクタ (PHY別途必要) |
| 対応プロトコル | TCP/IP、AVB/TSN、SOME/IP |
| MACアドレス | ボード固有のMACアドレス設定可能 |
CAN FDインターフェース
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| チャンネル数 | 4ch |
| トランシーバ | ROHM BD41044FJ-C |
| 対応プロトコル | CAN 2.0A/B、CAN FD |
| 最大通信速度 | CAN: 1Mbps、CAN FD: 5Mbps |
| 特殊機能 | パーシャルネットワーキング対応可能な回路搭載 |
LIN/CXPIインターフェース
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| チャンネル数 | 2ch |
| LINトランシーバ | ROHM BD41030FJ-C |
| 対応プロトコル | LIN / CXPI (トランシーバ交換により対応) |
| 最大通信速度 | LIN: 20kbps、CXPI: 20kbps |
活用シーン
開発フェーズごとの最適な活用方法
1. 先端技術研究・プロトタイプ開発
仮想化技術の研究開発
Hypervisor上での複数OS統合、リアルタイム性能の評価、仮想マシン間通信の最適化など、次世代車載システムアーキテクチャの研究開発に最適です。大学・研究機関での先端研究にも活用されています。
セキュリティ機能の実装評価
HSMを活用したセキュアブート、暗号化通信、SecOCの実装と性能評価。サイドチャネル攻撃への耐性評価など、車載セキュリティの包括的な検証が可能です。
2. ゾーンECU/統合ECU開発
マルチドメイン統合評価
パワートレイン、ボディ、ADAS等、複数ドメインの機能を1つのECUに統合。車載Ethernetをバックボーンとした次世代E/Eアーキテクチャの評価に対応します。
ゲートウェイ機能開発
Ethernet、CAN FD、LIN間のプロトコル変換、メッセージルーティング、セキュリティゲートウェイ機能の実装と評価。実車と同等の負荷条件での性能検証が可能です。
3. 量産前検証
機能評価
全ピンアクセス可能な設計により、詳細な解析が実施できます。
開発支援サービス
サニー技研の技術力でお客様の開発を加速
仮想化支援機能サポート
実績のあるサポート内容
- Hypervisor上での複数VM構成の最適化
- VM間リソース共有の課題解決
- CAN通信チャンネルの仮想化実装
- リアルタイム性能の評価と改善
SafeG-Auto導入支援
- 初期環境構築サポート
- カスタムVM構成の設計支援
- パフォーマンスチューニング
- トラブルシューティング
HSM/セキュリティ機能サポート
セキュリティ実装支援
- HSM機能の活用方法コンサルティング
- 鍵管理システムの設計・実装
- 暗号化/復号処理の最適化
- セキュアブート実装支援
性能評価・最適化
- 暗号処理性能のベンチマーク測定
- SecOC実装時の処理負荷分析
- セキュリティ機能のボトルネック解析
- 量産システムへの最適化提案
開発支援サービスの詳細については、お気軽にお問い合わせください。お客様の開発フェーズや要件に応じて、最適なサポートプランをご提案いたします。
製品仕様
ハードウェア仕様一覧
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 製品型名 | S810-GPX-U2A |
| 搭載マイコン | ルネサスエレクトロニクス RH850/U2A8 292pin (R7F702301BFABG-C) |
| 動作周波数 | 最大400MHz |
| フラッシュメモリ | 8MB (Code Flash) + 256KB (Data Flash) |
| RAM | 1MB (Local RAM) + 1MB (Retention RAM) |
| CAN/CAN FDトランシーバ [*1] | ROHM BD41044FJ-C |
| LINトランシーバ [*1] | ROHM BD41030FJ-C |
| Ethernetインターフェース [*2] | 100BASE-TX×1ch (Microchip LAN8700) 100BASE-T1対応コネクタ×1 (PHY別途必要) |
| CAN/CAN FDインターフェース [*2] | 4ch (3ピンコネクタ、パーシャルネットワーキング対応) |
| LINインターフェース [*2] | 2ch (3ピンコネクタ、CXPI変更可能) |
| UARTインターフェース | 1ch (USB Micro-B) |
| スルーホール | 2.54mmピッチ×292個 (全マイコンピン引き出し) |
| I/Oインターフェース | ディップスイッチ(8bit)×1 プッシュスイッチ×4 リセットスイッチ×1 LED×19 (赤4、黄1、緑14) |
| デバッグインターフェース | E2エミュレータコネクタ×1ch (14ピン) |
| 電源入力 | DC12V (ACアダプタ付属) 5V/3.3V/1.09V ボード上でDC-DC生成 |
| 消費電流 | 最大1.5A (12V入力時、全機能動作時) |
| 動作温度範囲 | 0~40℃ (結露なきこと) |
| 外形寸法 | (W)180×(D)140×(H)25mm ※突起部を除く |
| 重量 | 約350g |
[*1] 部品入手難の場合、互換品に変更になることがございます。
[*2] 部品供給状況により、実装数の変更や未実装になることがございます。
付属品
- ACアダプタ(入力: AC100-240V、出力: DC12V/5A)
- ハードウェアマニュアル(PDF形式、ダウンロード提供)
- 回路図(PDF形式、ダウンロード提供)
- 保証書兼解説書
※以下は付属しておりません
- サンプルソフトウェア
- 車載Ethernet PHYチップ
- CANケーブル、LINケーブル
- デバッガ(E2エミュレータ)
よくあるご質問
Q: TOPPERS SafeG-Autoのライセンスは含まれていますか?
A: SafeG-Auto自体はTOPPERSプロジェクトから無償で提供されています。本評価ボードはSafeG-Auto対応のハードウェアプラットフォームとして認定されており、すぐに評価を開始できます。導入支援サービスも提供しています。
Q: 車載Ethernet (100BASE-T1) PHYチップは付属していますか?
A: PHYチップは付属しておりません。100BASE-T1対応コネクタを実装していますので、お客様にて選定されたPHYチップを接続して評価いただけます。当社では、100BASE-T1対応のメガチップス製PHYボード(MAAE1003S)での動作実績があります。
Q: 仮想化機能を使用しない通常のマイコン評価も可能ですか?
A: はい、可能です。RH850/U2Aの基本機能評価から、仮想化を使用しない従来型のECU開発まで幅広く対応しています。豊富な通信インターフェースと全ピン引き出しにより、あらゆる評価ニーズに対応します。
Q: パーシャルネットワーキング機能の評価方法を教えてください。
A: CAN FDトランシーバがパーシャルネットワーキングに対応した回路構成になっています。特定のCAN IDでのWake-up機能など、省電力機能の評価が可能です。
Q: 開発支援サービスの期間と費用はどの程度ですか?
A: お客様の要件により異なります。基本的な環境構築支援から、受託開発によるソフトウェア開発支援まで対応可能です。まずはお客様の開発内容をお聞かせください。
Q: EMC試験に本評価ボードを使用できますか?
A: 本評価ボードは開発・評価用途に最適化されており、そのままEMC試験に使用することは推奨していません。